《植物物語》伝説の花・神話の花。植物からの愛とロマンのメッセージ 書き写したい花がある。写し伝えたい木がある。 |
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・サクラ(桜) 「春さらば挿頭(かざし)にせむとわが思いし 桜の花は散けるかも「妹が名に懸けたる桜はな咲かば 常にや恋ひむいや年のはに」。万葉集にはこんなに悲しげで切ない桜の花を歌ったものがあります。昔、山里深いところに桜児(さくらこ)という、それはそれは美しい娘がおったそうな。村の二人の若者が、美しい桜児を自分の妻にしょうと、毎日のように長い道のりを通いつめたそうな。決めかねている桜児の前で、とうとう二人は命を賭けて決闘することになったそうな。それを悲しみ、悩んだ桜児は「愛してくれるのは嬉しいけれど、二人に同時に嫁入りすることは出来ません。」といって林の奥へ走っていき、大きなサクラの木の枝に帯をかけて、死んでしまったそうな。男たちは、亡くなった桜児の死を悲しみ、それぞれ血の涙を流して詠んだ歌を残して、自決したそうな。その後、このサクラの木は若者たちの思いを宿して、満開の花を咲かせると、さっーと桜児の基に散っていくようになったと語られています。 |
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・にしきぎ (錦木) ”火と燃える”男心の想いを込めた錦木は涙ぐましいまでのプロポーズの木。 働き者で親孝行な若者は、背が高く頑丈な身体の割には、いたって気が弱く恥ずかしがりやでした。村一番の美しい娘に恋心をいだきながら、自分の想いを告げられずに、胸苦しい日々を過ごしていたのです。 ある日、思いあまって村の長(おさ)に相談しました。「長様、わたしは口下手で気が弱く、娘っこに、この気持ちを伝えることが出来ません。どうしたらよろしいでしょうか?」。長はしばらく考えてから、「それじゃのう。おまえのその想いを込めた錦木の木をその娘っこの門口に立てかけて見てはどうじゃ」。ただし、途中であきらめてはならぬ、と念をおしたのです。 若者はそれからはくる日もくる日も野良仕事が終わると美しく紅葉した錦木を一本一本、娘の家の門口に立てては帰って行きました。娘の家の前はそれは見事に紅葉した錦木に包まれました。今日も錦木を立てかけている若者の熱意にほだされた娘は、ついにわが家に迎え入れました岩木山からの夕陽に輝く、その日の錦木は100本目だったといいます。(青森・南津軽民謡より) また、秋田県・十和田駅の近くに現在でも「錦木塚」が祀られています。昔、この地の豪族・大海家の政子姫に恋焦がれた若武者が、錦木に思いの限りを込めて毎日、その姫の館の門口に立てかけ、それが千束になった折、若武者の想いを受けようとしました。しかし、父の大海の逆鱗にふれて許されず、若武者は絶望のあまりとうとう死んでしまい、これを知った政子姫も嘆き悲しみながら彼の後を追いました。その後、父の大海は自分の身勝手な振る舞いを悔い、若い二人の供養の塚を建てたといいます。この塚が今に残る錦木塚と伝えられています。いずれにしても錦木の美しい紅葉の色は、若者たちの熱い恋心の想いの色です。 花言葉は「あなたの魅力を心に刻む」です。 |
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・ボタン(牡丹) 中国では、この花を花王と呼び「百花の王」、富貴のシンボルとして珍重されています。大きく美しい姿でありながら、その表情はどこか慎ましい、淡い紅色の花は、頬を紅調させて恥じらう乙女のように見えますが、誇り高い花なのです。冬のある日、唐の則天武后が雪見の宴を催し、盃を片手に花の精たたちに命じました。「花の精たちよ、ただちに目覚めてこの庭に花を咲かせよ」。花の精たちは相手が時の権力者の武后なので、意に従うことにしました。しかし、誇り高いボタンだけは招集に応じなかった。怒った武后は、ボタンを長安のこの都から追放してしまった。流された先の洛陽では、大切に扱わられて、ボタンは大輪の豪華な美しい花を咲かせたといいます。洛陽の地は今も、ボタンの名所として名高い。 |
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・ヤナギ(柳) そう、泣いているのです。英語ではシダレヤナギを「泣いているヤナギ」(Weeping willow)といい、イギリスの花言葉では「死者へのなげき」、フランスの花言葉では「憂鬱」「悲愁」となっています。旧約聖書にも、敵の虜になったユダヤの女性たちが、バビロンの川のほとりにすわって、故郷のパレスチナの山を思い出して涙を流した岸辺のヤナギに、琴をかけた。その後ヤナギは琴ともに泣いたと記されています。また、フランスの詩人、アルフレッド・ド・ミュッセは「私が死んだら、私の墓にヤナギの木を植えてください。私はその涙ぐましい葉が大好きだ。」と詠んでいます。 *写真のヤナギはシダレヤナギです。憂いを秘めたヤナギの涙は今日も、天から雫を落としています。 |
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・ワスレナグサ(忘れな草) 愛する人へ、命をかけて消えていった男の、惜別の花。 薄青紫色したこの可憐な小さな花は世界各地で幾多の伝説を持って親しまれています。その中のドイツの若い二人の悲恋物語は今も、人々に語り継がれています。 *写真の群生がワスレナグサです。ドナウ河のように流れるこの群生風景は見事です。しかしこの風景も、年々小さくなってきています。 |
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